読書感想文


20010501 //
20100509 //
20100629 //
20100907 //
20101004 //
20101112 //
20101225 //
20110218 //
20110311 //
おまけ //


20100501 //

■「仮面の告白」
三島由紀夫の自伝的(?)小説。
同性愛者の性の目覚めから苦悩までが描かれています。これ……自伝? あ、半分自伝的な感じなんですね。
ヒロインが可愛かったです。近代文学に出てくる女の子はしゃべり方がめちゃめちゃ可愛いですね。三島由紀夫は今まで食わず嫌いしていたんですが、読みやすかったです。何故か、進んで読もうとは思わないけれど「仮面の告白」はおすすめしときます。

■「ティファニーで朝食を」
カポーティの短編集。「ティファニーで朝食を」はオードリー・ヘップバーンの映画で知っている人も多いはず。映画は起承転結がしっかりしていて、ヒロインとヒーローがハッピーエンドに終わる、物語らしい物語になっていますが、原作は違います。
「ティファニーで朝食を」においては、カポーティが提出した自由の女像はわたしのタイプじゃなかったかな。奔放過ぎてついていけませんでした。
「我が家は花ざかり」もあまり楽しめなかったのですが、「ダイヤのギター」と「クリスマスの思い出」はすごく良かった! カポーティは過激なストーリーより、古き良きアメリカの回想録みたいな話の方が素敵。過ぎ去った時間の懐かしさとか切なさとか、カポーティの描こうとしていた世界観は共感できます。「草の竪琴」も良かった!

■「世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド(上)」
わたしにとっては初・村上春樹作品。友達に進められたので読んでみました。余談ですが、わたしの大学には村上春樹が好きで好きで、もう関わりたくないという、よく分からない春樹ファンが多いです。
ファンタジーを絡ませた実は人間同士のかかわり合いの在り方みたいなものを追究した作品……なのかな。一見ライトノベルをどこまでも文学的にした文学、というような印象を受けました。軽く読めるけれど、奥が深い。ここが老若男女に愛される由縁かなと思いました。
ドア破壊のくだりは面白かった。

■「世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド(下)」
わたしにとっては初・村上春樹の下巻。
題名のとおり「世界の終り」と「ハードボイルド・ワンダーランド」という二つの物語が交互に進んでいくんですが、小説全部が比喩みたいな感じになっていて、全体を通して何を表しているのか。読者に疑問を投げかけて、最後まで作品のテーマや言いたい事を、明らかにしない。絵画のような小説だと思いました。

■「シャーロック・ホームズ 恐怖の谷」
久しぶりにシャーロック・ホームズ読みました。こちらはシャーロック・ホームズシリーズ最後の長編。
「四つの署名」もそうですが、シャーロック・ホームズシリーズの見せ場は登場人物の過去にスポットを当ててるところ。
今回は感動ものというよりハードボイルドっぽいお話でしたが、まさかのどんでん返しもあり、格好良かったです。
ホームズの宿敵・モリアーティ教授登場の伏線もある、味深いラストがとても良かった。この調子で短編も読んでいきたいです。
どうでも良いですが、警察機関に対してはひたすら手厳しいホームズなのに、ワトソンにはすごく優しいのは何故。こういったホームズの身内贔屓みたいなところがすごく可愛い。



20100509 //
■「草の竪琴」
トルーマン・カポーティの少年の成長を描いた小説。この一冊でカポーティのファンになりました。「ティファニーで朝食を」からすごく好きな文章だなぁと思っていたんですが、次読んだ小説も期待を裏切らなかった。
主人公の少年・コリンがおばあさんの従姉ドリーやおばあさんメイドのキャサリンなどと一緒に家を出て、近所の木の上で生活するという突拍子もないお話で、特に劇的な盛り上がりもないのですが、素晴らしい作品でした。カポーティの文章の表現は、温かみがあってすごく好き。既製品ではなく作者が経験してきたことやものから比喩を使っていて、独特だけど分かりやすい。遠い昔を振り返っている主人公の語り口調も好き。
この調子でこの人の作品を読み上げていきたいです。

■「優しい関係」
フランソワーズ・サガンの短編。今度の話の舞台はフランスのパリではなく、アメリカのハリウッド。登場人物たちも映画業界に携わる人が多くて、場面設定は異色です。
サガンの小説の登場人物は、本編の流れとは全く関係しない職業に就いていることが多いそうですが(と、サガン自身も言ってる)、今回は映画会社や西部劇のセットなどが物語の本筋にも影響しており、ハリウッドという土地柄を上手く活用していたと思います。
この話のキーパーソンとなるのは、謎多き美青年・ルイス。彼の主人公に対する優しさや異常な執着、殺人などの動機は、大分もったいぶって描かれていたのですが、劇的に明かされなくとも既に予想がついた感があります。その辺は少し惜しかったかな。

■「GOSICK II -ゴシック・その罪は名もなき-」
Tを読んでから一年……やっと二巻目に手を出しました。桜庭一樹先生の本格ミステリーライトノベル第二弾。
図書館の設定が相変わらず好きです。ああいう図書館が実際にあればいいのに、と思います。
さて今回はヴィクトリカちゃんの母親が生まれ育った町に行って、数十年前の密室殺人を解くというもの。閉鎖的な灰色狼の村の澄み渡った感じ、村で行われる夏至祭の細かな設定がとても面白かった。東洋と西洋、そしてソヴュールから断絶した灰色狼の村、今回はこの三つの場所の文化の違いもよく描かれていると思います。
相変わらずヴィクトリカたんはかわいい。

■「GOSICK III -ゴシック・青い薔薇の下で-」
二巻が面白かったので、早速三巻も読みました。今日は四巻を読もうと思っています。
今回の舞台はソヴレムという大都市で失踪した人々の謎を解くというものですが、探偵役のヴィクトリカちゃんは熱を出し、完全な安楽椅子探偵に従事しています。この話は二人があまり一緒にいないので、二巻のようなヴィクトリカちゃんと久城くんの絡みを期待していた読者は少し残念に思うかも知れません。早三冊目でヴィクトリカを久城くんと引き離し、作者さんも冒険したなぁと思ったのですが、代わりに久城くんとグレヴィール警部のよく分からないいがみ合いの関係を見どころに持って来ていて、読者を飽きさせない工夫がありました。
わたしはグレヴィール警部のファンなので、今回はとっても楽しめました。
ちなみに四巻では彼のアイデンティティのドリルをほどいて完全なるイケメンになってますね。とてもおいしい。



20100629 //

■「ろまん燈籠」
太宰治の短編集。「ろまん燈籠」は最初に収録されている四兄弟の物語です。さまざまな性質をもった五人兄弟。趣味趣向は全く違えども、それぞれ読書が大好きで、大筋は兄弟でリレー小説をするというもの。大半がそのリレー小説の内容で埋まっているのですが、それぞれの性格がその小説の書き方によくあらわれていて、太宰の書き分けに感心しました。
もうひとつおもしろかったのは、その家のおじいさんが月に一度、家族の中で一番頑張った人に金メダルを贈るという習慣。ユニークだし、最後にその金メダルがとても素敵な効果を出していてほろりと来ました。
太宰は大学中に読破したいなー。

■「十四歳の遠距離恋愛」
嶽本野ばらの中学生恋愛小説。実はこの小説の前に、例の「タイマ」を読んでいたんですが、どうにも我慢ならず(だって愛すべきNIRVANAの使われようがヒドイじゃないですか!)途中で挫折していました。
そのあと読んだこのお話なんですが、うーん……なんとも感想がつけがたい。面白くなくはないんですが、特別これはというものがない。主人公はいつもの嶽本さん作品らしいロリータ少女がでてくるんですが、スポットは相手役のガキ大将のような男の子に当てられている。嶽本さんにしては珍しい小説なんですが、なんだかその男の子が劣化版イチゴ(「下妻物語」)に見えて仕方なかった。
ラストも特に衝撃的というわけではないし、投げやりに終了した感が否めないのですが、ビギナーの方にはおすすめです。中学生のお小遣い事情がとても切ない。

■「エミリーの記憶喪失ワンダーランド」
大好きな「エミリー・ザ・ストレンジ」が小説になった!
定価では絶対買わない小説本も、エミリーならば別枠だわと、約1600円でお買い上げ。
ジャンルは児童書の部類に入るんですが、ロックでブラックでパンキッシュなエミリー調は小説の世界でも相変わらず、むしろこれは大人の嗜好品。内容も毒のある、とっても「エミリー・ザ・ストレンジ」らしい本になってました。
エミリーはキャラクターイラストから小物・グッズ・お洋服と着々と展開を広げつつあるブランドですが、出版、映画業界にも一波起こしそうですね。今後の発展がとても楽しみです。
ちなみに四匹の黒猫の中ではニーチェが一番好き。かっこいい。

■「正しいパンク・バンドの作り方」
嶽本野ばらさんがパンク・バンドを始めたみたいです。バンド結成から初ライブまでの道のりを綴った軽口エッセイ。「タイマ」以降の嶽本さんの本の中ではこれが一番楽しかったです。バンドメンバーのキャラクターもすごく立っていたし(っていっても実際に存在する方々ですけど)、何より嶽本さんのツッコミが秀逸すぎ。
微妙に余談ですが、わたしもギターをしているので、初心者ギタリストの苦悩が共感できました(アンプにちゃんとシールドつないだのに音でなくって、結局ギターのボリュームコントローラーがゼロになっていたとかね!)。
おまけについていたライヴDVDもカッコよかったです。本当に客席にダイヴしやがったよこの人って思いました……脚色じゃなかったのか。さすが野ばらちゃん。

■「遠い声 遠い部屋」
トルーマン・カポーティの処女長編。主人公ジョエルの、少年から大人へと成長途中である男の子の内面を追求したお話です。カポーティ独特のの詩的言葉使いがいつもより多用されており、全体としては抽象的で少々ゴシック趣味的な内容になっています。
残念ながら、これはあんまり好きではなかったなあ。カポーティの詩人のような言葉は大好きなんですが、それがあまりにも多用され過ぎていて、物語を捻じ曲げている感がありました。全体的に物語性のない物語だなぁと思いました。再読したり精読したりすればするほど、新たな発見がいくつもでてくる類の本であるとは思いますが、内容が内容なだけに、もう再読したくないなぁ。
残すところ「冷血」を読めばカポーティはだいたい終わり。ちょっと切ないです。

■「クリスマスの思い出」
クリスマスを題材にしたカポーティの半自伝的小説。翻訳は村上春樹さんです。「ティファニーで朝食を」に収録されていた「クリスマスの思い出」を読んでていたのですが、こちらは挿絵も乗っているし、ちょっと春樹訳も読んでみたいし、ということで読読。
翻訳者によって物語の雰囲気って大分変わるようですね。こちらは主人公バディーと一番の親友のおばちゃん(ミス・スック)の関係がまるで恋人同士みたいに描かれていて……うーん村上春樹だなぁと思いました。
わたしは「ティファニーで朝食を」収録の「クリスマスの思い出」の方が好きです。やっぱりバディーとミス・スックの間には友情と家族愛のほかは何も見受けられないし。その他の感情を取り入れると温かで質素なこの小説の持ち味が失われていくような気がします。
「感謝祭のお客」も「草の竪琴」も大好きです。

■「葡萄酒か、さもなくば弾丸を」
手嶋龍一さんの政治批評を交えた政治家たちの伝記小説。アメリカのイラク問題、日本とロシアの北方領土問題、EUのユーロ統合問題など、題材はセクションごとに多岐にわたっています。
本のかっこいいタイトルどおり、少しハードボイルド調を交えて、政治裏の暗躍やケネディ暗殺にも触れています。文章が上手く、政治問題に疎いわたしでも最後まで読みとおすことができました。一章は小説風の物語になっているのに二章三章と進んでいくごとに情景描写が薄く、物語調もなくなっていってしまったのは残念でしたが、創造力のあるジャーナリストさんだと思います。
予備知識が全くなかったのでキツイ部分もありましたが、政治に関する一般知識のある方には大変楽しめると思います。ついでに言うと自分の政治知識のなさに愕然としました。

■「第四解剖室」
スティーヴン・キングの短編集。蛇にかまれ仮死状態になった男が解剖室に運ばれてしまうという、ハラハラドキドキのサスペンスストーリー。他四編くらいあります。
「第四解剖室」は以前に映像として見ていたんですが(確かWOWOWでやっていた「スティーヴン・キングの四つの悪夢」)、小説として読むと風刺というか、アメリカンジョーク的なものが多く見受けられますね。危機的状況に陥っているのに、主人公の男のモノローグがとても楽しい。
「黒いスーツの男」は恐ろしかったです。さすが、O・ヘンリー賞に輝くだけはあるなぁ(スティーヴンさん的には信じられなかったそうですが)。
もっと悪魔の世界を知りたいと思いました。
「ジャック・ハミルトンの死」は実話をもとに作られているらしく、ギャング三人の会話がいかにもワルを楽しんでいる風でカッコよかったです。ジャックの撃たれた瞬間は、なんとなくボニー&クライドの映画「俺たちに明日はない」で、クライド兄・バックの死んだシーンを彷彿させました。

■「魔女の宅急便 その3 キキともうひとりの魔女」
ふと恋しくなって、読みました。以前買っておいたまま、手を付けていなかったみたい、自宅の本棚に発見。
ジブリでは13歳だったキキも、原作の三巻では16歳に成長しています。
このお話、児童書なんですが、さりげなく人間心理の深い部分がたくさん書かれているんですよ! びっくりしました。思春期のキキの前に現れたちょっと鼻につく女の子、ケケみたいな子は現実にもたくさんいるし、特別目立つケケの存在に、心がもやもやしてしまうキキの気持にも共感できて。
子供に向けて書かれたお話なので、それがわかりやすくシンプルに纏められているところがこの物語のすごいところ。真似できないなぁと思いました。
一期一会という言葉が似合う、キキに配達を頼んでくるお客さんたちは皆個性的で、愛らしい人たちばかりです。



20100907 //

■「嵐が丘」
至上の恋愛小説と呼ばれるE・ブロンテのゴシックロマン。とにかく長かったです。ヒースクリフ家とリントン家の二家庭しか出てこないのに、各家庭の説明が延々と続きます。
昼ドラも真っ青な嫉妬や策略が主にヒースクリフの脳内で渦巻いていて、久しぶりに草食のかけらもない肉食系男子を見ました。映画にしてもドラマにしても漫画にしても、最近はひ弱な男の子がもてはやされているのでとても新鮮でした。内容的には大したどんでん返しもなく、ひたすら読者の予知できる範囲のイベントが続いていくばかりでしたが、家政婦さんの視点から語られているので楽しめないことはないと思います。
キャサリンとヒースクリフのやりとりと、家を出て行ったヒースクリフが瀕死のキャサリンに再開したシーンは、それまでが長い話だけあって心にずっしりとくる重みがあります。

■「王国 その4 アナザーワールド」
よしもとばななさんの王国シリーズ第四弾。時は流れ、さまざまに変化した雫石や周りの人々、死を過ぎ去ったその後の日々をニノという娘の視点から語ります。
前半はニノ自身の生い立ちが大半なので、王国を初めから読んでいない方でも楽しめますが、王国シリーズは一通り読んでからお読みになることをお勧めします。
上記した通り、前半はニノの生い立ち、後半は全シリーズを読んできた読者に対するサービスですね。おいしそうな食べ物がたくさん出てきます。この登場人物たちの中の一人は必ず読者の身近にいる人物に当てはまるんじゃないかと思います。わたしにも一人だけ「これはあいつだろ!?」と思うような身内そっくりキャラが出てきてすごくびっくりしました。

■「浴室」
ジャン=フィリップ・トゥーサンというフランスの人が89年あたりに書いた作品。この作者はのちに映画監督になっています。心理描写をいっさい含まずに淡々と場面描写だけで話が続く、エキセントリックな小説です。
内容は、二十代後半の彼が何のきっかけもなく突然浴室にひきこもったまま生活していくというお話。
突拍子もないように見えて小説ではありきたりかなあと思われるひきこもり設定なんですが、なんと数ページで浴室を出て行ってしまうというフリーダムな行動が小説の暗黙のルールを無視している感じで斬新でした。
無私な小説って憧れるんですが天野は絶対真似できません。「浴室」、とても素晴らしい作品でした。
後に「ためらい」という同作者の小説を読んでますますジャン=フィリップ・トゥーサンってすごいな人だあと思いました。

■「絵のない絵本」
アンデルセンの童話調の人間小説。その当時の社会情勢が垣間見え、なおかつ風刺も交えた小説でもあります。
絵描きに月が見てきた様々な国に住む人たちの話を語るという形式で書かれているのですが、月が主観を交えずに話すため、話に出てくる問題点や道徳に関する意見は完全に読者に投げかけられたままになっています。結末はあってないようなものなんですが、そこがまた深い。
中には孤独や慈愛など、人間とは切り離せない題材を描いているお話もありますが、全体的に童話調なので小さいお子様にも読みやすいのでおすすめです。内容はともかく、小さいお子たちは雰囲気を楽しめばいいと思う!

■「銀河に口笛」
朱川湊人さんのスペースファンタジー? 朱川さんお得意の昭和の街並みを舞台に、六人の少年たちの友情を、大人になった主人公の視点から、ほのぼのと描いています。数話ごとに区切られているのですが、全編を通して今はなき友人に語りかけている主人公の口調がとても切なくなりました。バリエーション豊富な朱川作品の中では「さよならの空」に雰囲気が近いです。ほんわかした話の中に、ところどころにアンダーグラウンド的なにおいがさりげなく織り込まれており、最近はめっきり書かなくなった朱川さんのエログロホラーワールドが、色は薄まれどもこのお話にも受け継がれているので初期ファンも必見です。
ただ最初の頃から「スーパーどんぐり」というスペシャルアイテムを引っ張っていた割には、あまり大した役割を持っていなかったことが少し残念というか、物足りない感じがしました。

■「ヘヴン・アイズ」
デヴィット・アーモンドの浮世離れしているような現実ファンタジーな小説。ジャンル分けしにくいところですが、これは児童書なのでしょうか? 大人が読んでも楽しめますが、子供たちがいかだで冒険をするあたり児童書のように見えるし、ヘヴン・アイズのキャラクターだけをみるとライトノベルに取れないこともないです。
「クレイ」もそうでしたが、現実の中に少しだけおどろおどろしい物語を入れるという作品のスタンスはおしゃれだなあと思いました。ヘヴン・アイズのキャラクターもとてもかわいかったです。
ただ、登場人物やちょっと怖くておどろおどろしいという雰囲気の描写に力を入れすぎていて、結局何を伝えたかったのかがよくわかりませんでした。キャラクター小説で終わってしまった感じがします。ジャニュアリーの最後の方の結末も、結局序盤で読者を引き込むための導線の役割しか果たしていなかったので、もう少しひねりがほしかった。
とにかくヘヴン・アイズのキャラクターがすごく可愛かったので読了感は爽やかですが、「ヘヴン・アイズ」のキャラクターを好きになれない人は楽しめないかもしれません……。

■「セロ弾きのゴーシュ、他短編」
宮沢賢治の短編集。今夏セロ弾きのゴージュの論文を書かなければならなかったので購入しました(論文まだ終わってませんんんんん……!!!!)。
賢治の童話はこれまで数冊読みましたが、話し言葉を突き詰めていった小説だなあと改めて思いました。噛めば噛むほど味が出るというような話を、賢治を研究している先生から聴きましたが、確かに読むたびに新たな発見が出てくる。謎が謎を呼ぶ小説ばかりだと思います。とくに「ペンネンネンネンネネムの伝記」。これの改作「グスコーブドリの伝記」に続いて掲載されていたんですが、グスコーブドリでちょっと感動した後にネネムが来ると大変気持ち悪かったです。なぜ、現代から魔界に舞台が変わって、ブドリと同じような話が進んでいくのか、ネネム=ブドリのプロトタイプ(?)という予備知識がないとすごく不気味です。
「オツベルと像」の最後の一文にも意味不明すぎて鳥肌がたちました。宮沢賢治は淡々としたホラー的な要素をもった作品が多いので熱帯夜に背筋がヒヤッとしたい方はぜひ読んでみてください。

■「君は永遠にそいつらより若い」
津村記久子のデビュー作。日本語の使い方も出てくるキャラクターもかっこよく、すらすらと読めました。今時、休憩もせずに、文章の中につっかかる部分もなくすらすら読める小説ってすごく珍しいと思います。
ちゃんと読者のことを思って書いてくれているんだなあと感動。話の内容も、一見今後の流れとつじつまが合いそうもない妙な出だしがクライマックスの方とループしていて、策略的で楽しかったです。
対人との微妙に気まづくなった時の空気や、大学の飲み会事情など、身近なことが精細に描かれていて、デビュー時から津村さんは洞察力が卓越していたんだなあと思いました。
大学生に読んでほしい一冊。読書が好きではない方も、SNSの日記的なノリですらすら読めると思います(でも日本語が崩壊していないところがさすが!)。

■「黒い髪のアリス」
岡本蒼さんの「不思議の国のアリス」をオマージュした人間小説。ダ・ヴィンチ文学賞を受賞されたらしく、「ダ・ヴィンチ」も「不思議の国のアリス」も好きなので読んでみました。
読者に近い文章タッチなので親近感を持って読み進むことができます。一話ごとに別の世界、別の話になっているので、暇な時間にすらすら読めちゃう、バリエーション豊富な本です。同じ登場人物で別世界の話というのはアイデア的にすごく面白い! と思ったんですが、最後までそれぞれの世界に関連性がないまま終わってしまったので、別に同じ人物を使い回さなくても良かったんじゃないかとも思いました。
なにかしらエピローグでそれぞれの世界をまとめてくるかと期待していたんですが、アリスのパロディ的な終わり方で少し物足りなかったです。最後は投げつけられた感じがしました。

■「幸福の王子」
オスカー・ワイルドの短編集。童話の中に社会風刺やアイロニーがふんだんに取り込まれてあり、それが童話の中に仄めかしてあるというよりは、よりわかりやすい形で読者に伝えようとしているところが他の童話と違ってびっくりしました。善と悪、一見善に見えるけれど実は愚者や偽善者だったという、キャラクターの裏の顔までもが、三人称であからさまにしているところが思い切りがあって良かったです。
童話のナレーターがここではキャラクターを材料にした主人公みたいになっていて、かなり主観も多く、読者に理を説いている感じ。取り付く島のなさがこの童話説話の良いところだと思われます。
必ずお姫様と王子様が幸せにならない(この短編にはそんな話は出てきていませんが)ような、一般に道徳的だと言われていることの裏をつくような話が現実的で深かったです(「薔薇とナイチンゲール」、「星の子」など)。
「幸福の王子」以外はむしろ子どもに読ませちゃいけない類の童話だと思いました。

■「はてしない物語」
世界的に愛されているドイツ作家ミヒャエル・エンデのファンタジー。「ネバー・エンディング・ストーリ」と聞けばご存知の方も多いと思います。小さい頃に映画版の「ネバー・エンディング・ストーリ2」を見て大興奮したんですが、この映画は著者・エンデをも怒らせた原作破壊で有名だったんですね……。
さて、原作なんですが、これぞ本格ファンタジーですね。どこまでも続くファンタージエンの国、現実の動物たちとはかけ離れた外見の生き物たち、独自の文化を持つ町々など、設定があいまいなところが一つもなく、本の中に一つの世界が出来上がっている印象をうけました。
何より素晴らしいなあと思ったのは、読んでいる読者をも本の中に飛び込ませるような斬新な技巧。物語の一部と二部の境目では、今までに読んだことのない設定というか技法というか、とにかく本が意思を持っているように思えて、感動どころじゃない何かが心の中から競り上がってきました。大げさではなく、本当にファンタージエンが目に迫ってくる感じ。脇キャラの今後を好きに連想できるような「それはまた別の物語」オチも楽しめました。創作者に夢を与えるような素敵な本でした。きっと、これからも「はてしない物語」はどこまでも続いて行くんでしょう。



20101004 //

■「午後は女王陛下の紅茶を」
大学教授・出口保夫さんがイギリス人の紅茶の飲み方を解説したイギリス式紅茶専門書。
近年、紅茶を我流に改造する日本人が多いため、イギリスの伝統的な紅茶の飲み方の復古を呼びかける、アンチテーゼでもあります。
出口先生の息子さんの挿絵がところどころに挿入されていてとても美しく、紅茶の飲み方、淹れ方についても詳しく解説されているので紅茶好きにはオススメです。
わたしも紅茶ブームが再来して、紅茶専門店ルピシアで茶葉買ってきちゃいました。

■「三四郎」
夏目漱石の青春文学。「三四郎」、「門」、「それから」の三部作の一部でもあります。
学校課題で読んだのですが、日本語がとても美しく、すらすらと読めます。さすがは漱石先生。
上京してきた大学生・三四郎と美禰子との恋の駆け引きのような、メランコリックな会話のやりとりがとても魅力的です。恋愛小説とも読めるし、三四郎の友人・与次郎や広田先生に焦点を当てれば、人間小説とも読める、一人の大学生の悩みや恋愛をリアルに描いた文学です。ラストの広田先生の夢の話がとても好きでした。

■「斜陽」
没落した貴族一家が頽廃してゆく様を描いた太宰治の小説。この小説が元で当時は“斜陽族”という言葉が流行ったそうな。
太宰治の中では一、二を争う暗さの小説ですが、太宰が真っ向から対峙した、人間の美しさ・生きてゆくことの切なさが身を削るように描かれています。
上記の「三四郎」と比べると壮絶な内容で、確かに小説的な展開だし、登場人物の誰もが特殊な環境についている人々なのに、その誰にしても共感してしまう。これぞ小説! というような本です。ぜひ一読。

■「クロノス・ジョウンターの伝説」
SF作家、梶尾真治さんの小説。「この胸いっぱいの愛を」の原作でもあり、演劇集団キャラメルボックスで舞台化もされました(「クロノス」)。わたしが高校生のころ、ちょうどキャラメルボックスの「クロノス」を見に行く機会があり、とても面白かったので、原作を読読。
あまり心理描写はなけれども、とても楽しく最後まで読めました。SFってあまり読んだことがなかったのですが、起承転結がはっきりしている小説は読みやすくて良いですね! エンターテイメントは心が休まるので好きです。タイムマシーンの理論はよく分からなかったんですが(文系なんで筋道だった理論は分からないのよー、と言い訳)、読者を楽しませることに徹した、後味の良い恋愛SF小説でした。
ちなみにBOOK・OFFで購入したんですが、なんと梶尾真治先生のサイン入りでした! ラッキー。



20101112 //

■「ダークタワーT ガンスリンガー」
スティーヴン・キングのダークファンタジー。冒頭の解説にもあるように全六巻で三十年という執筆時間の末に完結している大長編。否、大長編というか、キング氏の解説を読む限り、休筆→再開→休筆のサイクルを何回か繰り返してきたがためにこのように十年単位の執筆時間になってしまったようですよ。解説の中にはアル中からの復帰についても少し触れていて、改めてキングのクリエイターとしての誇りを感じました。
内容は浮世とは違った次元にある砂漠化が進んだ世界なんですが、ところどころに人間の欲望がむきだしに描かれていて、ストーリー全体がとてもワイルドな雰囲気です。どちらかというと、男性に向けられて書かれた小説のように感じました。この本一冊がプロローグのようになっており、主人公の生い立ちやダークタワーの存在など、文中に出てくる謎の大半が明かされずに終わるので、全巻すべてを読破する心意気がない方にはおススメできません。
ちなみにわたしも全巻読む気がしないので、後は今後にご縁があり次第ということで、放置してます(笑)

■「パーク・ライフ」
吉田修一の芥川賞受賞作。日比谷公園を舞台に、特殊な環境におかれている主人公の会社員と名も知らぬ女性の曖昧な男女関係を淡々と描いています。
舞台設定がはっきりとしていて、何気ない毎日をアンニュイな言葉づかいで次々と斬っていく小説ってすごく好きなので「パーク・ライフ」も楽しんで読めるかと思ったんですが、あんまり趣味じゃなかったかな。裏表紙のあらすじを読む限りとても魅力的なお話に見えたんですが、当り前のことを当たり前に描写し過ぎていて退屈しました。せっかく主人公が独特の環境におかれているのに、それに絡んだエピソードが少しも出てこないのに違和感がありましたし、結末の展開もあっけなさ過ぎるところが逆に不自然な印象がしました。もうちょっとひねってほしかったなぁ。

■「ためらい」
ジャン=フィリップ・トゥーサンの第四作目の小説。理由も明かさず島にやってきた父親が今回の主人公。途中からサスペンス的な要素も加わり、トゥーサン初の探偵小説的な色を見せている作品です。
この作品、フランスではあまりウケが良くなかったみたいなんですが、わたしは好きです。主人公の息子である赤ちゃんの描写がとても自然で、赤ちゃんの仕草に対する主人公のコメントが中々面白い。サスペンス調を交えなくとも「ぼく」と「息子」のエッセイ調のやりとりだけで楽しめます。
もちろん、猫の死体の謎や失踪した友人の行方、ミステリ小説として読んでも楽しめる一粒で二度もおいしい仕様。
トゥーサンの新しい試みがこの作品でもことごとく開花しています。

■「ムッシュー」
ジャン=フィリップ・トゥーサンの第三作目の小説。トゥーサンの作品の主人公の中でも一番社会性のあるムッシューくんが生きる社会での一連のできごとをユーモラスに描写。ムッシューを取り囲む人々の微妙な位置関係をこれ以上ぴったりな言葉はないというくらい正確な言葉選びで表現しています。
相変わらず結末の予想がつかない風来坊ぶりを発揮していますが、身近にいそうな人間味あふれるキャラクターが次々と現れるので、あれよあれよと言う間に小説の中にずるずる引き摺り込まれ、気づいたら終わっているような感じ。ラストはちょっぴりロマンチックでメランコリック。まるでハリケーンのような小説です。

■「蛍、納屋を焼く、その他の短編」
村上春樹の短編小説集。友人の部屋にあったのを勝手に拝借して読読。村上春樹の言葉づかいというか、話のテンポの良さは相変わらずで、さして面白いモチーフを使っているわけではないのに漫画みたくすらすら読めます。
とにかく比喩のセンスや挿入音楽のチョイスがいちいち洒落ているよね。小説ではなくオサレな情報誌のようにも読めてしまうところがなんとも得した気分になります。
中でも「踊る小人」が好きです。メルヘン的な話のなかにところどころ現代のセンスが交錯していて、古臭くないものになっています。
象工場とか、革命とか、わけのわからない設定も好き。



20101225 //

■「スウェーデン館の謎」
有栖川有栖&火村英夫の名コンビが送る本格ミステリー。
有栖川有栖といえば、ちょうどわたしが中学生の時にはまっていた推理小説なんですが、買いためたまま未読本が出てきたので久しぶりに読んでみました。
推理小説ってシャーロック・ホームズ以外あんまり読まないんですが、有栖川有栖、良いですねえ!
有栖川有栖の一人称で話が進んでいくんだけど、キャラが立っててすらすら読めちゃう。関西人の独特の語り口と言うか、地の文でもさりげなく一人ツッコミを入れてるところが笑えます。
トリックも分かりやすく、なおかつ中々思いつかないネタで楽しかったです。ライトノベルのようにサクッと読めてしまうので娯楽を求める方はどうぞ。

■「魔女の宅急便その4 キキの恋」
角野栄子の魔女の宅急便第四弾。小さかったキキも17歳になりました。この本は一作ごとにキキが成長していくので、読者が主人公のキキにより近い距離で楽しめます。
今回は血気多感なお年頃のキキが恋をします。淡く控え目な表現でキキの揺れ動く感情を描いていて、どの年齢層の人が読んでも心温まる内容だと思いました。
相変わらずキキに感情移入しまくりです。

■「魔女の宅急便その5 魔法の止まり木」
角野栄子の魔女の宅急便第五弾。
宮崎駿さんの映画にもあったように、今回キキは大変な困難に直面してしまいます。思春期から大人への成長の中で揺れ動く女の子の気持ちに注目した一冊。
魔女猫ジジとの新たなる関係の変化がすごく切ないです。幼い頃から見知っている友達が、大人になるにつれて自分とは違う世界に住んでしまうこと。わたしたちの日常生活の中で必ずと言っていいほど起こっている切ない体験が、角野さんの優しい筆で綴られています。

■「カメラ」
ジャン=フィリップ・トゥーサンの三作目の小説。作者はこの作品が「浴室」〜「ためらい」までの四作品の中で、一番自分らしい小説であると言っています。確かに、この作品は他の三作と比べると、メランコリックな表現が多く、「何も扱っていない小説」というよりは「言葉にできない何かを扱っている小説」のように思います。時系列順に読んだ人はすごく衝撃を受けたんじゃないかと思う。
いつものトゥーサンらしい皮肉は少ないものの、とても良い作品でした。特に今回の作品に登場するパスカルという、主人公の恋人がかなり素敵です。先天的な倦怠感を持つ女の子なんですが、持病的なだるさ、絶望とは結びつかない類のあきらめの感情が素晴らしく描かれています。
ラストシーンも情景が目に浮かぶようでとても切ない。あらゆる年齢の方にも楽しめる小説だと思います。

■「FREEDOM フットマークデイズ2」
「AKIRA」の大友克洋氏がキャラクターデザインを手がけたことでも有名な「FREEDOM」のアニメのスピンオフ作品。時系列的にはタケルとビスが地球に行っている間のカズマくんにスポットが当てられています。
とにかくカズマの心理描写や成長過程が精密に描写されていてすごいと思う。題名通り、「自由」がこの作品の主軸になっていると思うんですが、自由気ままにふるまうことの無責任さ、社会に束縛されることへの不安など、若い人たちが必ず一度は通過するであろう心の葛藤がカズマの視点からリアルに描かれています。
ライトノベルなんですが、大人も楽しめる内容だと思います。懐かしい感じがする。



20110218 //

■「怖い絵」
中野京子さんの怖い逸話がまつわる中世の絵を集めたコラム。掲載されている絵の殆どが高尚で甘美なものばかりなのですが、本文を読むとどれも血生臭い話ばかりです。そのギャップが何よりも恐ろしい。
個人的に、以前からゴヤの「わが子を食らうサトゥルヌス」という絵が好きだったのですが、やはり掲載されてました。いつ見ても気持ち悪くて素敵です。カニバリズムって本当に気持ち悪いけれど、本能で惹きつけられる部分がありますよね。
ホラーとして読んでみるのも楽しいかもしれません。

■「夢野久作(ちくま文庫)」
夢野久作の傑作集。「瓶詰地獄」、「人間腸詰」などの代表的なエログロ話が載っています。夢野久作といえば「ドグラ・マグラ」ぐらいしか読んだことがなかったので、それなりに知っておけてよかったかも。
ハマる人はハマる作風。一話読んで好き嫌いがはっきり分かれる作家だと思います。
ちなみにわたしは大好き! となるわけでもなかったかな。曖昧な終わり方をする作品が多くて、江戸川乱歩のように怪奇小説だからこそハッキリ終わらせてほしいというのがありました。

■「猟奇連続殺人の系譜」
コリン・ウィルソンという人が書いた。連続殺人犯の犯行記録を年譜で追った記録。系譜というからには遺伝的な話かと思いきや、新聞記事のように淡々と事実だけが述べてありました。
資料として読むには最適ですが、エンターテイメントを求める方には物足りないと思います。

■「道徳という名の少年」
桜庭一樹の連続短編小説集。四人姉妹の娼婦から始まる家系的な物語です。
基本的に淡々と進んでいきますが、中途半端にモノローグを交えることをしないので、すらすら読めます。
桜庭さんの長編のように、すごく感動することはなかったのですが、読み終わった後に独特の切なさが染みてきます。ちゃんと物語が終わったという感じ。

■「神秘のタロット占い」
海界めいさんと沖門土さんの共作。最近タロットカードにハマっているので買いました。
大アルカナのカードがセットでついていて、詳しい解説や質問の型にあったスプレッドの方法が載っています。カードの切り方まで細かく書いてありますので、タロットを始めたい方にはぴったりの占い本です。スピリチュアルをもっと勉強したい。



20110311 //

■「暗い宿」
有栖川有栖の短編集。色々な雰囲気の宿屋を舞台に火村&アリスの名コンビが華麗に事件解決します。
というか、有栖川有栖作品の素敵なところは華麗に事件を解いてもどこかおどろおどろしい終わり方をしてしまう、良い意味での後味の悪さにあるのではないか、と思っています。
どれも違った風味のあるお話ですが、中でも「201号室の災厄」が好きです。火村先生が珍しく、肉体的窮地に立たされていて、まあ、はっきり言うと、萌えますよね。ボクシング態勢の火村教授かっこいい!
普段からは想像もつかない戦闘シーンが盛り込んであって、ミステリとはまた違ったところでも楽しめると思います。

■「水曜日のうそ」
C.グルニエというフランスの作家さんが書いた家族愛の物語。装丁はとてもきれいだし、好きな翻訳家の方が訳されていたので読んでみたのですが、私的にはいま一つ心に響くものがなかったように思います。主人公のお父さんの心の動きがあまり伝わってこなかったかなあ。家族小説と読むには、材料が少ない。
どことなくさみしくさせるような、文章のタッチはとても好きでした。

■「カンガルー日和」
村上春樹の短編小説集。今さらですが村上春樹が自分の中でちょっとしたムーヴメントです。
限りなく現実に近いけれど、ひとつだけとんでもない空想のできごとが混ざっている。この人のお話はメリハリがあって良い感じです。新聞だか雑誌だかに掲載されていたらしくほとんどの小説がショートショートの形を取っているんですが、最後に載っている「図書館奇譚」というお話だけ他のものと比べると、三倍くらいの長さがあって、読み応えや重量感を求めている人も満足できるのではないかと思います。
「図書館奇譚」はわたしが幼いころに恐れていた「知らないうちに大変な方向に話が進んでいく状況」が最初の方に綿密に描かれていて、少し懐かしい気持ちになりました。

■「火村英生に捧げる犯罪」
有栖川有栖の短編集。ちょうど火村&アリス関連のミステリ本がこれで十冊目に当たるそう。
中編並に盛り付けされた豪華なものから、創作メモ程度の些細な事件まで、読者の読書時間に合わせて(?)大小様々の事件が用意されています。
長編を読んでいないと分からない設定も少しだけでてくるんですが、お話それ自体に支障はないので初めて有栖川有栖を読む人にもおススメ。むしろこの作家さんの毛色がとてもよく出ていると思うので、ビギナー必須かと思われます(っていっても、わたしも初心者に毛が生えた程度の有栖ユーザーなのですが)
タイトルと同名の「火村英生に捧げる犯罪」は、もっと盛りつけして映画化とかしてほしい! と思えるような、盛大なお話です。



おまけ
電子書籍履歴(100ページ以内の短編)
スマートフォンを購入してから電子書籍を読むようになりました。これ、すごく便利ですよ。満員電車の中でも場所とらないし、携帯なので出し入れが簡単。わたしは現在「青空読手」「青空文庫ビューアAd.」というアプリを使用して読んでいます。スマートフォン(アンドロイド端末)をお持ちの方は、この機会にぜひ電子書籍に挑戦してみてください。
また、わたしは持っていないのですがニンテンドーDSでも「DS文学全集」というソフトが開発されているよう。便利な時代になりましたな。


・コナン・ドイル「瀕死の探偵」
・モーパッサン「ある自殺者の手記」
・芥川龍之介「あの頃の自分の事」「アグニの髪」「「菊池寛全集」の序」「「仮面」の人々」
・太宰治「女生徒」「葉桜と魔笛」
・小野佐世男「ストリップ修学旅行」
・竹久夢二「大きな蝙蝠傘」
・横光利一「作家の生活」
・林扶美子「愛する人達」
・巌谷小波「三角と四角」


2010年5月1日〜2011年3月11日